れ間支障


 

 失言だとは思ったのです。


「あくまで友人ですから」



 三連休の最後の日、雨上がりともあってか買い出しに賑わうスーパーの駐車場で彼に会いました。
 私はすれ違っても気づかなかったのですが、彼はわざわざあとを追ってきてこう言いました。

「家まで持つよ」

 二リットルの飲料水が三本。重さで取っ手がちぎれそうになっているビニール袋を指差して彼は言いました。
 ありがたいです。マイバッグは冷凍食品と袋ラーメンで一杯で入らなかったのです。
 予想以上に重かったのでしょう。よろけた彼の空いた腕を片手で支えた時に四軒隣の田中のおばさまに見つかってしまいました。

「あらあらあら!」

 田中のおばさまのあだ名は「壊れたスピーカー」です。あだ名に恥じないほど早く、そして内容は不確かに噂話をまいてしまうひとでした。
 なので、先制攻撃をしかけなければいけなかったのです。先回りをしたのです。彼の名誉を守るために。

「赤の他人です」

 ではあまりにも失礼になると思いました。

「彼氏ではありません」

 ではあまりにも意識し過ぎと思いました。

 考えた結果、これが一番よかったのです。

「あくまで友人ですから。とてもよい方です。あくまでよい方ですが友人どまりです」

 固まっている彼の腕をひいて足早にその場を去りました。
 家まで荷物を持ってくれた彼は疲れた顔をしていました。

「ありがとうございます、でも」

 もうすこし鍛えたほうがいいかもしれませんよ。

「そうだね…」

 自分でもわかっていたようです。

 失言でした。

 


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