板消しの君


 

 彼女は黒板だけは見てくれる。


 学級委員長は真面目だ。
 他の女子のように制服は着崩れていないし、髪だって規定通りに黒いゴムでひとつにくくっている。
 痛んでいない髪は風に吹かれてふわふわと揺れる。光が反射してとてもきれいだ。
 僕が見たことがあるのは彼女の後ろ姿だけ。
 恥ずかしがり屋な委員長は人と話すとき、顔を下に背けてしまう。
 彼女が正面に向くのは授業中、ノートをとるために黒板を見つめるときだけだ。
 休み時間は次の授業の復習か予習に余念がない。
 真面目だ。
 どこまで真面目なんだ。
 だからあの日見た光景に心奪われたのかもしれない。


 その日の僕は、昼夜逆転生活な母のお供で完徹でゲームしてハイになっていた。
 ハイになったまま思い出したのだが、昨日悪友達にバツゲームとして黒板いっぱいに大量のモアイを描いた(リアルを追求してしまった)のを放置して帰ったような気がする。
 あれはやばいな。
 担任に見つかるとやばい。
 ただでさえ目をつけられているのにHRに吊し上げられるのは回避せねば。今の時間ならまだ痕跡を消せる。
 いつもより二時間早く出かけた僕が見たのは、世にも不可思議な美しい光景だった。

 一番乗りだと思ったその教室の鍵はすでに職員室にはなく、どことなく居心地が悪いまま開け放たれた窓から中をのぞくとそこには。
 委員長がいた。それも消し去りたい黒板の前に。
 やめてくれ、そのモアイは僕の一番ではない。人様に見せられない。もっと研究しなければならない不完全なモアイなんだ。
「見ないで」と言おうとした僕は口を間抜けにもひらいたまま固まってしまった。
 笑ってる。
 委員長が笑っている。
 まるでフキノトウのような、けして派手ではなく小さく雪を割ってかすかに見える、でもそれは僕の目を、心を奪われるに足る尊い光景だった。
 しかしその光景は長くは続かず、小さく息を吐くと黒板消しを手に取り、僕のモアイを消しはじめた。
 彼女の黒板掃除技術は素晴らしかった。
 まず黒板消しとクリーナーを駆使して上下にスライドするタイプの黒板をすみずみまで消してから濡れた雑巾で拭きあげる。とどめに乾いた雑巾で拭いて乾かし、右下角に今日の日直の名前を書く。
 完璧だ。
 その動作に迷いはなく、付け込む隙などはない。
 本来なら手伝わなければならないだろうが、僕は彼女の死角になる窓から隠れて見ていることしかできなかった。
 その行為はまるで崇高なことのようで、邪魔することがためらわれたのだ。
 グラウンドから野球部のかけ声が聞こえてくるようになってから、彼女は自分の教卓の真正面の席に座ると、いつものように何かの予習か復習をはじめた。
 僕がその場に固まっている間に、他のクラスメイトが僕を追い越して教室に入ってきた。
 朝のあいさつに小さく会釈を返す彼女を見て、あの光景がいつも行われている日常だと窺い知れた。
 あの光景を、もう一度見たい。彼女が黒板だけを見るのなら。
 僕は。


「高千穂、ちょっと」

 放課後、いつものように誰もいなくなるまで寝ていようと机に伏していた僕を呼んだのは担任だった。嫌々ながら教卓に近づくと見えた、先週に出した最終進路調査表。
 僕の進学希望先は家から徒歩五分の偏差値中の上、可も不可もないそこそこな高校である。学力的に落ちる心配はしてない。

「本当にこれでいいのか。お前この間の模試で蓮見ヶ浦にA判定出してたろ」

 そっちか。

「蓮見ヶ浦ですかー」

 蓮見ヶ浦は二つ上の兄が通っている、世間でもそこそこ名の通っている偏差値馬鹿高い男子校だ。
 女顔の兄いわく、人によっては地獄、誰かにとっては
聖域( サンクチュアリ)だと顔を青くして言っていた。深くは聞くまい。
 男だらけの学校なんてそんなものよと母はいい笑顔だった。子をネタにするんじゃない。
 そんな母は少年誌で連載をもぎ取る人気漫画家である。
 朝日が上れば眠り、夕日が沈めば起きだす。どこの吸血鬼だろうか。
 僕は文字を覚えるよりも早く消ゴムかけを覚えさせられ、なわとびではやぶさを習得するより早くベタフラッシュを習得せざるを得ない家庭で育った。
 一応、父も掲載誌が休刊されたり廃刊されたりしながらさすらうマニアック向けの漫画家だ。自分の漫画を描いているよりも母のアシスタントをしていることのほうが多いのだが。
 僕自身もお小遣いと引き換えにこきつかわれている。
 おかげで家で満足に寝ることはあんまりない。
 一応、授業中は起きているようにはしている。暇すぎて寝ないように風景ごとノートに書き写したりしているけど。
 そんな家庭なので両親は進学に口を出してこない。義務教育さえきちんと出れば中卒でも(推奨はされないだろうが)構わないと言うだろう。
 最低、アシスタントで生きていけるだけの技量はあると自負しているし。

「朝課外とか夕課外とか面倒ですもん」

「もんってお前な…せめて美術科の選択肢はないのか? 伊藤先生はいつでも推薦すると」

 いやな名前がでたな。

「やめてください」

 自分にしては大きな声が出たと思う。まだ数人残っていたクラスメイトがこちらを振り向いた。
 小声で話すことでもないだろうけど、こんなところで話す内容ではないだろう。

 伊藤は今年赴任してきた美術教師だ。
 二年美術部にいた僕だがゴールデンウィーク前に辞めた。
 うるさいのだ。あの美術教師。ああしろこうしろ。
 基礎を教えてくるならまだしも、描くものにまで押しつけられるのは耐えられなかった。
 別に帰宅部になろうが絵が描けなくなるわけでもないし、元部活仲間の悪友との仲もそのままだ。
 しかし伊藤はしつこく僕に復部を迫ってくる。

「伊藤先生とは話したくないんで」

 僕はそう言い切ってまだ何か言っていた担任から離れて自分の席で静寂が訪れるのを待った。


 昨日描いたのはオーギュスト・ロダンの未完の作品、地獄の門。
 考える人だけでもよかったのだが、それだけではさびしいので全体を描いてみた。
 僕は一度見たことがあるものは忘れないので、手元に本はいらない。
 模写は家族の誰より上手いと評判だった。
 描く絵にこれといったこだわりはない。
 あまり極端に方向性を決めると描きにくいので、頭に残っているイメージを先行させて描く。
 アニメのキャラであったり、歴史上の人物であったり。童話をモチーフにした時もある。
 どんな絵を描けば彼女は笑ってくれるだろうか。この絵を見てどんな表情を浮かべるだろうか。
 想像すればするほど僕の中のイマジネーションが溢れてくる。
 感情を絵に吐き出すのは、口に出すよりも容易なことだ。
 昨日の鬱屈した思いが絵に表れてしまった気がする。

 いつもの時間より大分早く起きた。平和だ。
 親は今現在〆切という名の修羅場で、同じマンションの違う部屋に最近ずっと籠っている。
 顔を見せないうちが花だ。本当にどうしようもなくなればこっちの事情はお構い無しに引っ張りこむ。
 静かなことはいいことだ。うるさいのは嫌いだ。
 そういえば。
 彼女の声をちゃんと聞いたことがないな、とその時ふと思った。

 いつもより少し早くついた教室は騒然としていた。
 何があったんだろうか。せっかく早く着いたのだから席について寝たいのだが。

「高千穂くんの絵はそんなんじゃない!」

 ざわついた人波の向こう側、聞こえた声にドア近くにいた人間を押し込んで前に出た。
 少しイラついていた僕の目と、彼女の目があった。
 はじめて。
 黒板しか見なかったその目がこちらを向いた。声も、ちゃんとした声も聞けた。
 なんだろう、この気持ち。
 溢れてくる感情は。
 もっとこっちを見てほしいのに、彼女は顔を隠してしまった。
 こっちをみてほしい。
 その声で話しかけてほしい。

 黒板ではなく、僕を見てほしい。

 しかし彼女は下を向いたまま、心なしか肩を震わせていた。
 視線を彼女から人の群がる黒板の方に向けると、驚いた。
 いつもなら新品のように輝いているはずの黒板が、まだ僕の絵で汚れている。
 人間だもの、寝坊でもしたんだろう。
 むしろ半年以上も遅刻も休むこともせず一番乗りであること自体すごいと誉め讃えたい。
 しかし、いやなことになったな、と思う。
 絵がこういう形でさらされてしまうとは。
 あの絵は、黒板は彼女のためだけにあったのに。

 その後のことは思い出したくはない。
 どうやら教室にいたらしい伊藤に連れていかれた美術教官室で、延々と己の話をされ続けて耳にタコができるかと思った。
 途中から意識をどこかへ飛ばしてみたりして、キリを見て逃げ出したがまだ言い足りないようだった。
 全く話が通じない。
 こちらが何を言っても鋼の意志とはおそれいる。
 教室に戻っても追いかけられるだけだろう。
 今日はもう帰ってしまえ。
 ああでも、彼女に会いたいな。
 しかし彼女はいつ気づいたのだろう。

 あれが僕の描いた絵だと。


 おぼえとけ、あの親め。
 火曜に早退した日を含めて四日、家に帰ると出くわした母に引きずられて修羅場に身を投じた。
 サボるよりよっぽど有意義と言われたが、どんな意義があるというんだ。
 朝一番の便に無事原稿が乗ったのを確認し、床に崩れるように倒れながら爆睡した。起きたら、毛布がかけられていた。
 何度ともなく決心する。
 漫画家にはなるまい。
 そこそこいい大学出て、昼間働く会社に入ってやる。
 時刻は四時過ぎ。
 学校への連絡だけは父がしていた気がする。そんなところに気が利くなら子を逃がしてくれ。
 あの母の夫だから仕方がないかもしれないが。
 とにかく、風呂に入って寝直そう。
 シャワーは毎日短時間で済ませてきたが、浴槽には入れなかった。
 あくびをかみ殺しながら開けた玄関の先。
 あれ、寝ぼけてるのかな。まだ夢の中だったりするのだろうか。

「いいんちょ?」

 癖のない長い髪をなびかせた彼女が、そこにいた。
 なんで、こんなところに。
 固まった僕とは逆に口をパクパク目をパチパチと忙しなく動かしながら、彼女は向かいのドアと僕の握ったままのドアを手で左右に指差した。

「あの、私、部屋まちがえええええ」

「いいんちょ、ストップ。落ち着いて」

 間違えてはいない。そっちは自宅でこっちは仕事場だから。ただし仕事場は壁ぶち抜いて、ワンフロアに改造してあるんだけども。
 近いほうがいいよね、だけど家と仕事場は別がいいよねーと別けられているだけでこっちもというか、この階二つの部屋どちらも僕の家だから。

「プリント渡しに来ました!」

 慌てている彼女は、それでもこの場に来た意味をなそうと、僕の胸にプリントのはさまれたクリアファイルを渡した。
 学校の連絡等のものだろうか。
 わざわざもって来てくれたのか、学級委員だから。
 真面目だな、本当に。
 でもよく迷わずに着けたな。ここの番地入り組んでいて見つけにくいんだけど。

「あー、ありがとう」

「どういたしまして! じゃあこれで!」

 帰ってしまう。
 どうしよう、引き留めたいけれど話す内容がないしと手元のファイルに目を落とすと、あれ。
 これは。

「これ、いいんちょのじゃないの?」

 透明のファイルにはさまれた、丸よりもペケの多い回答用紙。
 全問埋めているのに点数が低いってどういうことだろう。
 あ、この問題は使う式が違う。ここも。
 振り向いた彼女はしばし固まっていた。反応がない。どうしようか。
 しばらく、そのまま固まっていた彼女は力なくその場に崩れ落ちた。
 慌てて近づいた僕に、両手で顔を隠しながら「後生ですから土をかけてくだい」と小さく何度も言っている。
 よくわからないが、引き留めることができた。
 腰が抜けたという彼女をなかば抱えて家に上がってもらった。
 見かけよりも重いな、と思った。

 家に上がってもらう。
 ああ、でもどうしよう。冷蔵庫見たら何も入ってない。
 そうだった、食材があるならあっちの家か。
 せめて飲み物は出さないといけない。急いで仕事場のキッチンに向かうと兄が何か作っていた。

「なにそれ」

「チーズケーキ。母さんが食べたいって言うから」

 兄は原稿を手伝うよりもこうやって料理を作ったり洗濯物を畳んだり、掃除機をかけたりしていることのほうが多い。いわゆる飯スタントか。
 学校だって僕と違って行かせてもらっていた。
 不平等だ。兄弟なのに。

「それ、二切れちょうだい」

「甘いの苦手なのにそんなに食べれるの?」

「いや、客が来てる」

 彼女は客と言えるだろうか。
 無理やり連れ込んでしまったけれど。

「なら何か淹れたげる。コーヒーでいい?」

「たぶん」

「たぶんてお前ね」

 ぶつぶつ言いながら、盆にソーサーとケーキを切り分けていく兄の手元に狂いはない。
 こういう気が利くところが兄の長所だろう。
 僕にはできそうもない。
 それなのになぜ彼女が一人もできないのか。
 どうも告白しても振られているみたいだ。
 誰かを特別愛すること。
 結婚する前。
 恋人。好きになるという、こと。
 僕にはあまり理解できない。
 絵を描くのは好きだ。
 例え目が見えなくなろうと、この手が使えなくなろうと僕は描き続けている気がする。
 強い、だれにも渡さない執着心。
 それに、似たような何か。
 僕は最近触れなかっただろうか。
 心揺さぶる、なにか。

「友達ひとりだけ? あとからまた来るなら増やすけど」

「来ない。女の子がひとり」

 性別も伝えておいたほうが、何かと気が利く兄のほうがわかるかもしれない。
 金属製のフォークが音をたてて床に転がった。
 何をやってるんだと拾い上げると、僕より背の低い兄は先ほどの僕のように固まっていた。
 流行ってるのか、固まるの。
 らちが明かないのでそのままにして、棚からきれいなフォークを新たに出すと盆を抱える。

「持っていっていい?」

「お、まままままま」

「ママ?」

「違う! 女の子? お前が家に女の子?」

 何を言っているんだろう。僕は男だ。
 何とも形容しがたい顔をした兄は放っておこう。
 飲み物は入手したし、早く待たせている彼女のもとに行かねば。


 ケアレスミスが多いな、と思う。
 問題はちゃんと理解しているのに、おしい間違いが随所に転がる。
 数学は似ている式にひっかかったり、途中から計算ミスで答えが違う。
 国語は漢字のスペルミス。欄書き間違い。
 英語、理科、社会も微妙におしくて仕方がない。
 基礎はできているのに、なんだろうこのもどかしさ。
 数学が苦手なのかと聞いてみたところ、教科全般が不得意だというので、ファイルにはさまっていた回答用紙をすべてみせてもらった。
 全体的におしい。
 それが僕の見解だ。
 あれだけ勉強しているんだ、頭が悪いんじゃない。要領が悪いんだな。

「高千穂くん、ちょっといいかな」

 兄の作ったケーキを美味しそうに食べた彼女に、まず基礎問題を解かせようと中学一年生の習うレベルの数式をいくつか書いて渡してみた。
 わからなくて聞いてきたのかと思ったら、想定外の言葉が返ってきた。

「高千穂くんって、なんで黒板に絵を描くの?」

 なんでって。

「君が消すから」

 それ以外になにがあるというのだろうか。
 彼女が消さなければ、僕は黒板に絵など描かなかった。
 彼女の笑顔を見なければ、描かなかった。

「あの、いままで勝手に消してごめんなさい」

 彼女が深く頭を下げた。

「なんで、謝るの」

 むしろいままであんな騒動にならなかったのは彼女のお陰なのに。
 クラスメイトは知らない。
 あれだけきれいな黒板を毎朝見て、不思議に思わなかったのだろうか。
 しかし、その答えに彼女は不服そうに頬をふくらました。

「なんでって。だってあれ高千穂くんが描いたんだよね」

 はじめて見る表情に、胸がざわつく。

「うん、君が消すから」

 彼女が毎朝僕の絵を見て、どんな表情を浮かべるだろうかと思えば心が弾んだ。
 彼女に消されることが本望。
 どうしたら伝わるんだろう。

「あれは消されるためにある絵。君に消されるためにある絵」

 彼女に感情を向けてもらうがために描いた、絵。

「消されるためにある絵だなんて」

 あるんだ。
 毎朝彼女に消された絵は、僕そのもの。黒板にだけ向けられるひたむきな行動にどれだけ惹き付けられたろう。
 絵にしか執着のない僕が、もう一度その笑顔を見たいと願うほどに。

「もったいなくなんてない。いいんちょに見られるために描いたものだから。その後消されてもあれだけきれいに消されれば、うれしい」

「うれしいって…うん、あれ。あ、わわわ、私が毎日黒板掃除してるの知ってたの?」

 彼女の顔がホオズキのように赤く染まる。
 この表情も、はじめて見るな。

「うん」

「うんって。ちょっと待っていつから」

 いつからだっけ。
 モアイを描いたのがゴールデンウィークはじまる前の日だったから。

「ゴールデンウィーク終わった週のはじめ」

 そうだ。美術部をやめてなにかを描くことに辟易した頃、彼女の笑顔に落ちた。
 絵を描くことよりも、まず彼女のことに頭がいった。

 あれ。
 この感情はなんだろう。
 この強い執着に似たひっかかりは。
 執着。絵以外での、執着。
 頭の中の辞書が開く。

 【執着とは仏教において事物に固執し、囚われる事。
 悪い意味で用いられ、修行の障害になる心の働きと考えられている。
 仏教術語というより一般的な用語であり、現代語の執着(attachment)によく似た意味で煩悩の術語としてのraaga(愛)あるいはlobha(貪)に近い】

 【raaga】

 そうか、僕は。

「でも潮時かも。伊藤うるさいし」

 そういえば、僕に執着する人間がいたな。
 愛あってのことではないだろうが。
 それに、僕は気づいてしまった。
 この感情の名前。

「いまのままだと、黒板に嫉妬してしまいそう」

 なんてまどろっこしいやり方だったんだろう。
 いまみたいに話しかけてみれば、その目はこちらを見てくれただろうに。
 その声を聞けただろうに。

「委員長のこえ、かわいいよね。シジュウカラみたい」

「ありがとう」

 小さく、彼女が微笑む。
 黒板に描いただけでは、彼女の声を聞けることはなかったろう。
 そして、直接こうやって笑顔を見ることも。

「僕ね、話すより描くほうが楽。絵もね、いいんちょの反応を想像して楽しんでた。けどね」

 想像だけだなんて、馬鹿げてる。
 ねぇ、もっと僕と話そう。
 その目を、黒板だけじゃなくこちらにも向けてほしい。

「黒板より僕を見て。色んな表情を見せてよ」

 僕はずっと、君の笑顔がほしかったんだ。

 


 

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